田中靖浩 公認会計士事務所

美術館めぐり日記
by 田中靖浩 and Friends

2019.11.16   絵画鑑賞日記

ターナーが隠したメッセージ「雨・蒸気・スピード-グレート・ウェスタン鉄道」

【「雨・蒸気・スピード-グレート・ウェスタン鉄道」ターナー】

今年(2019年)はヨーロッパからアメリカまで、あちこちの美術館に行きました。一番始めに訪れたのがロンドンのナショナル・ギャラリー。

この美術館でドキドキしながら向かったのが「会計の世界史」で紹介したターナー作「雨・蒸気・スピード-グレートウェスタン鉄道」。

いよいよ実物とご対面とあって胸の高まりを抑えることができません。まるで人生初のデートに向かう時のような心境。実物の絵でどうしても確認したかったのが、「野うさぎ」。

なんでもターナーは機関車の前を逃げるように走る「野うさぎ」を描いたのだとか。しかし美術本でもネットでも、解像度の関係で確認できませんでした。「これは肉眼で確認するしかなかろう」とはるばるロンドンまで向かった私。

幸いにしてこの名画の前に人はまばら。10cmの至近距離でしっかり確認したところ、たしかにいるじゃありませんか、野うさぎが!(すみません、私の写真でも確認できませんね)

この絵にさまざまな「隠れた思い」を託したターナー。蒸気機関車の右側には小舟が描かれています。この小舟と蒸気機関車は新・旧時代の対比なのでしょう。そして機関車に追われるように逃げる野うさぎは、おそらく人間の比喩です。みんな機関車を「時代を変える乗り物」と歓迎しているが、手放しで喜んでいいものなのだろうか。もしかしたら我々はこの新たなテクノロジーによって「時間に追われる」生き方を余儀なくされるのではないか? そんなターナーの懸念が野うさぎによって表現されているのだと思います。

ターナーの絵にはそんな「隠されたメッセージ」が多く、それを想像することが楽しみのひとつであります。
(田中)

<ナショナル・ギャラリー、ロンドン 2019/2/18>