田中靖浩公認会計士事務所

　仲山さんはかなり「ひきょう」な人です。みんなから爽やか好青年的で「飄々とした」印象を持たれているようですが、私は「そうでもない」と思っています。仲山さんの処女作「ビジネス頭の磨き方」を読んだあとに感じたのが「矛盾」でした。
　成功法則を「わかりやすく分解して」示しながら、それでいてどこか「そのままマネしたって成功しないよ」と突き放した感じ。こうした矛盾を抱えながら、それを表面的に感じさせないところが「ひきょう」なのです。私のように矛盾がすぐ「納得できねえぞ」と顔に出てしまう人間からすると仲山さんはとても羨ましいです。
　世の中でもっとも矛盾を孕むものといえば、なんといっても人間関係。仲山さんがチームビルディングの分野に進んで講演・執筆をやっているのは必然だといえましょう。今回の合宿では実際の演習を含むチームビルディング講義を行ってくれるそうです。どんな内容なのか、私も「飄々とした好青年イメージ」目指して参考にしようと思います。

　仲山さんとはもう知り合って10年以上になります。最初は、当時まだぼくにとって未知数だったネット・ショッピングモール「楽天」というところにいる若手だと聞いて、色メガネで見ていました。当時のネット系ビジネスパースンは（ぼくも含め）よくわからない人が多かった。
　「やわ」な人も多かった。きっと仲山さんもそんな類いの1人なんだろうって。ところが、ぼくと同時期に出版された本を読むと骨のある人だとわかりました。骨があるのに、やわらかいニュアンス。
　その後楽天は成長し、世界的に著名なブランドに育ちましたが、創業メンバーでもある仲山さんは変わらずひょうひょうと「骨があるのに、やわらかい」ままです。
　ここ5〜6年ほどは「やさぐれ」感もスパイスとして加わり、とてもいい感じになっています。仲山さんの仕事の話に移りますと、チームビルディングがきっと天職なんでしょうね。ソーシャルなつながりあった経済では、閉じた組織の中でだれか1人のボスが統率するようなチームはあり得ません。開いたアメーバのようなチームで、みんなが主人公になる。仲山さんは自ら実践しているからこそ、語ることができるのだと思います。
現代が生んだ「骨があるのに、やわらかいやさぐれ男」、それが仲山さんです。ぼくは大好きです。

　田中さんは「男気な人」です。2000年秋の最初の出会いからして、男っぷりに男が惚れる出会い方をして以来、その男気に惚れっぱなしです。多くの人から「アニキ」と慕われるのはとても納得します。
　田中さんは好きなように生きています。すべてにおいて小賢しく、ちまちまと、しょうもない生き方、働き方をする大人の多い中、田中さんほど男が見ても惚れ惚れする一本筋の通った男は、いません。
　仕事の話もしましょう。一般に会計士といえば時制でいうと「過去」の数字をなんとかしてくれる人です。会計士の口から出る言葉は「制限」が多い。過去と未来を事例に出して、「＊＊だから＊＊はやめなさい」。結果、「いま」が犠牲になる。田中さんはさすがに「元」会計士だけあって、彼の発想は「いま」です。現在進行形です。田中さんの口から出る言葉は「開放」です。
　未来を憂いていまを犠牲にするな！
　過去をくよくよ考えていまを犠牲にするな！
　田中のアニキは、人生の応援団長なのです。

　阪本さんがメルマガ「Surfin'」で、「この会計本はやばいよ！書き込みしまくった！」というような紹介を書いてくれたのが、田中さんの『経営がみえる会計』との出会いでした。読んでみると、「B/SとP/Lって、点と線なんだよね」という衝撃的にわかりやすい図が！　さらにはいまだにどっちかわからない貸し方・借り方が「右から入って左でグルグル」ですと！？　いつの日か一度お会いしてみたい、と思っていたある日、阪本さんからメールがきます。「田中靖浩さんと二人会をやるんだけど楽天大学の教室を借りられないか？」と。私は思いました。「さカモとさんが田中さんを背負ってやってきた！」。
　というわけで、田中さんを「ネギ」にたとえてみようかと思ったら、「薬味」ということばが浮かんできました。田中さんがブログで吠えてくれる（？）のを読んで、ふるまいをチューニングしている人（主に大企業や旧態依然とした組織にお勤めで意識的または無意識的に依存体質になりがちな方）は少なくないことと思います。言い換えると、豆腐や蕎麦のように安定感のある人たちに、「それだけじゃこの先マズいでしょ！」と喝を入れてつつ寄り添ってくれる薬味的な存在、それが田中さんだと思います。
　というか、ネギというより、私にとって田中さんは「（憧れである）孤高かつ自由という責任を背負ったスナフキン」みたいな人です。

　阪本さん初の自著『パーミション・マーケティング・セミナー』に衝撃的ともいえる共感を覚えたのが2000年。その後、たしか『スローなビジネスに帰れ』だと思うのですが、「10個全部に当てはまった人はメールをください」と書かれたチェックリストに全部当てはまってしまった私は、ドキドキしながら阪本さんにメールを送りました。そうしたら、ランチでもいきましょう、ということになったのが阪本さんとの初対面だと記憶しています。以来、許諾をもらって「とんがり」を楽天大学用語として使わせていただいたのをはじめ、著書やメルマガからたっくさん「阪本イズム」を盗ませていただいています。
　ちょっと偉そうな物言いになるかもしれませんが、私にとって阪本さんは「なんとなく思ってたことをエッジの利いた表現で言語化してくれる師匠」です。私が楽天市場の店長さんたちと試行錯誤するなかで「なんとなくこうだな」と思っていることが、これ以上ないタイミングで出版されてくる不思議。その阪本さんの問題意識の移り変わりを、リアルタイムにトレースするチャンスに恵まれたことは、私の学びに計り知れない影響を与えています。ちなみに、私のチームビルディングコンテンツの原点の一つは、『あなたが伸びれば、会社も伸びる』。この本は、私が楽天という会社の成長プロセスで体験した出来事（ありとあらゆる組織の成長痛）が日記のごとく言語化されていたという衝撃の内容です。
　というわけで、「タイムマシンでやってきて『こうせなアカンで！』と教えてくれる未来人」が阪本さんなのです。

　私にとって阪本さんは「すこし前を歩く先輩」のような存在です。昔から感心するのはとにかく「言葉の力」の強いところ。本でも講演でも、阪本さんは「自分の言葉」で表現します。それが読者や観衆を惹きつける。偉くなればなるほど「専門用語に頼る」専門家ばかり見てきた私にはとても新鮮でした。
　ブランドを「とんがり」と訳す阪本さんは、「身体的言語能力」にたけているのでしょう。ふだんの生活や経験を自分の言葉にする身体的言語能力こそはビジネスやコミュニケーションの原点ですが、現代人はこれをどんどん失いつつあります。
　「マーケティングは自らの人生を抜きにして語れない」と豪語する阪本さんが、どのようにして「自分の言葉」そして「自分のマーケティング」ワールドをつくってきたのか？今回は参加者とともに、私もその講義を楽しみにしています。