落語家さんと共演している私ですが、とくに落語に詳しいわけではなく、またオチケン(落語研究会)出身でもありません。ホンの数年前、偶然聞いた落語がとても面白くてこの道(?)に進んだといういうわけです。
いまにして振り返ると、やはり「初めて聞いた落語さんが面白かった」のはとても幸運だったと思います。落語家さんには申し訳ないですが、初めて聞いたときに「ふ〜ん」という程度だと、それほど落語好きにならないと思うのですよ。
その意味で、落語初心者にとって「始めに誰を聞くか」はとても大切なのです。そこで面白い落語家さんに当たればよし、そうでないと「落語、ふ〜ん」で一生終わってしまう可能性があるわけです。
だから私は周りの初心者には、「何とかチケットを取って『面白い落語家さんの独演会』に行った方がいいよ」とアドバイスします。
あまり寄席に行くのは勧めません。(注:寄席は新宿末広亭、池袋演芸場、上野鈴本などのこと)。寄席は寄席の良さがあるものの、意外に初心者には分かりづらい面白さのような気がします。あくまで個人的な感想ですが。
それでも、仕事帰りにふりと行ける寄席はやっぱり魅力的な場所。
ここでは私からビジネスマン向けに「寄席の楽しみ方」をひとつご紹介しましょう。
それは「前の人の気配の消し方」です。連続で出演する寄席において、自分が高座に座ったときにはまだ「前の人の空気」が場に残っています。これを早く消して、自分の雰囲気に変えてしまわないと演者はやりにくくて仕方ありません。
座ってから1分、いや30秒に注目してみてください。彼ら落語家さんはそこで見事、前の人の気配を消して、自分の空気に変えてしまいます。
それはビジネス界でよく使われるアイスブレイクなどという甘っちょろいもんなじゃいです。一瞬にして場の空気を「自分用」に変えてしまうんですよ。
ウソだと思ったら寄席に行って確認してみてください。注目は「座ってから1分」ですからね、お見逃し無く!